地星社のブログ

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調査にだまされず、調査でだまさないために—『「社会調査」のウソ—リサーチ・リテラシーのすすめ』

【ロサンゼルス4日=共同】(略)米紙ロサンゼルス・タイムズが4日発表した世論調査でこんな結果が出た。9月下旬、全米で1600人を対象に行ったこの調査では、健在の4人の前、元大統領のうちだれを支持するか、という質問に対し、35%がカーター氏、22%がレーガン氏、20%がニクソン氏、10%がフォード氏と答えた。(略)(朝日新聞 1991.11.16)

 この世論調査の問題点は何か、ということが本書の冒頭で出題されます。25年前の新聞記事なので、出てくる大統領の名前にあまりピンと来ない方もいることでしょう。今のオバマ大統領の前の4人だと、レーガン、ブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(子)となりますが、これだともう少しわかりやすいでしょうか。

 引用されている記事でいうと、4人のうちカーターだけが民主党で、残りは共和党です。ですから、この4人のうち1人を選ぶとすれば、共和党支持者の回答は分散し、民主党支持者の選択肢はカーターしかないので、もともとカーターが支持を集めやすい選択肢になっています。だから、もしオバマ大統領の前の4人を選択肢とすれば、クリントン氏が一番支持を集める可能性が高いでしょう。このように、特定の選択肢が上位に来るような選択肢の作り方を、「forced choice(強制的選択)」というそうです。

 本書では、上述の記事のような具体例を示しながら、社会の現実と調査結果のズレを生むバイアス(偏向)が20種類以上解説されます。気づかずバイアスの入った調査をしてしまうこともあるでしょうし、意図的にバイアスを利用しようとするケースもあるでしょう。槍玉に挙げられるのは、学者、政府・官公庁、社会運動グループ、マスコミなど。この分類で言えば、NPOは社会運動グループに入ると思います。

 問題の存在を多くの人に知ってほしいという意図は正しくても、バイアスの入った調査は、最終的には調査の信憑性を損ねるものです。(意図せず)だましたり、だまされないためにも、社会調査をする上でどのようなバイアスがあるのかを知るには必読の本です。(布田)

 

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)