地星社のブログ

社会をよりよくする活動を行っている人や組織を支援する宮城の非営利組織、地星社のブログです。

太鼓で閖上に元気を!全国に感謝を!

 閖上太鼓保存会は東日本大震災で大きな被害を受けましたが、困難を乗り越え、活動を続けています。老若男女入り混じったメンバーが力強い掛け声とともに太鼓の音を響かせる保存会の活動を取材しました。

■取材先:三浦勝治さん(閖上太鼓保存会)
■取材日;2020年12月19日
■取材・文:長岡大季 
■団体概要:
 団体名 閖上太鼓保存会
 所在地 名取市閖上公民館

楽しいから続けている

 閖上太鼓は平成2年、全国的な「和太鼓ブーム」の中、健全な青少年育成と地域おこしを目的に始まりました。平成4年には保存会が設立され、以後、市内での演奏に留まらず、海外公演やアーティストとのコラボレーションもするなど、精力的に活動を行ってきました。最近はコロナ禍で演奏機会が減っていますが、令和元年度は約50回演奏を披露しました。

 「小6の時、よく分からないまま公民館に連れて行かれたら太鼓があったんです。でも、叩いてみると楽しくて、そのまま今まで続けています」と話すのは、代表の三浦勝治さん。現在は鼓手としてだけでなく、教える立場としても活躍しています。和太鼓には撥の持ち方や姿勢、リズムの取り方、舞台での振る舞いなどの所作があり、基本である4拍子のリズムを正確に叩くのにも反復練習が重要といいます。ただ、閖上太鼓保存会では、上手に叩くことよりも、太鼓を叩く純粋な楽しさを大切にしているそうです。

 

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子供からお年寄りまで楽しく太鼓を叩いている

震災にも負けず叩き続ける

 東日本大震災では閖上地区も大津波に襲われ、住民、建物、練習場所や太鼓も流され、大きな被害を受けました。しかし、その2ヶ月後には「太鼓を叩きたい」と再びメンバーが集まってきたそうです。地区外の会場を借りたり、寄付を集めて太鼓を修繕・購入したりと、日本全国の多くの人から支援をいただき、活動を再開。「再び太鼓を叩いたときの嬉しさは忘れられない」と三浦さんは語ります。演奏を聴いた住民から「励まされた」と声をかけられ、太鼓を叩く喜びに加えて、閖上を盛り上げた喜びを感じたといいます。「再び太鼓を叩きたい」という保存会のみなさんの情熱は、生活を再建しようと奮闘する住民の心を照らしたのです。

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「閖上街開き」では御神輿とともに太鼓が華を添えた

「閖上の音」を響かせよう!

 保存会が演奏する保存曲「閖上大漁太鼓」には、港町・閖上の誇りが詰まっています。この曲は、閖上に伝わる民謡2曲をまとめて編曲されました。音の大小は波のうねりを表現し、撥を振り上げる動作は漁師が網を引き上げる動作を表現しているそうです。また、衣装のモチーフは漁師達が昔着ていた祝着であり、演奏時には漁業で使われる網も登場します。保存会のみなさんにとっても思い入れのある曲で、三浦さんは「『閖上のもの』を残したい。閖上太鼓の音が閖上に根付くまで演奏し続けていきたい」と語ってくれました。

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太鼓の前に「大漁」の魚が描かれた網が置かれている

  震災から10年。全国各地から多くの支援をいただいて閖上地区以外での演奏機会も増えました。「太鼓の演奏を通して、今度は感謝の気持ちを届けたい。呼ばれたら日本全国どこでも演奏します」と三浦さんは言います。支えてくれた人への恩返しと「閖上は元気です!」というメッセージを込めて、閖上太鼓はこれからも力強い音を響かせます。