地星社のブログ

社会をよりよくする活動を行っている人や組織を支援する宮城の非営利組織、地星社のブログです。

NPOではない、地域の小さな団体の価値

 かつて、仙台市市民活動サポートセンターで働いていたことがあります。当時、そこは全国的に見ても先駆的な公設民営の施設だったので、行政の方の視察や来館もけっこうありました。そうして訪れる行政職員の方からは、「うちの市(町)は、NPOがあまり活発じゃなくて…」「趣味のサークルみたいな団体はあるんですけど…」というような話を聞くことも、ときとしてありました。そこには「うちの市(町)の住民の意識はまだ遅れていて…」と卑下するようなニュアンスも感じられました。

 仙台市は人口規模も大きく、市民活動団体の動きも活発で、街中に立派な支援施設があって、そんな状況を見ての率直な感想が先の発言につながっていたのでしょう。当時は私も、「その市(町)ではNPOも少なくて、自発的に社会的課題に取り組む人もあまりいないのだろうな」くらいに思っていました。

 しかし、震災後にいわゆるNPOと呼ばれるもの以外の活動を見聞きするうちに、地域に対する見方が変わってきました。例えば、地星社が事務所を置く岩沼市もNPO法人の数はそう多くありません。しかし、高齢者の介護予防や生きがいづくりなどを目的とした「サロン活動」をしている方たちが地域の中にけっこういらっしゃるということを知りました。

 また、別の町の例ですが、シニア世代の方たちのダンベル体操のサークル活動が盛んだそうで、町内にそうしたサークルがたくさんあるという話を伺いました。その町の社協が地域住民によるダンベル体操のサークル活動を後押しし、それで広まったとのことでした。この町は岩沼よりもさらにNPO法人の数が少ないです。

 サロン活動もダンベル体操のサークルも、NPOというよりは共益的要素、サークル的要素が強い活動でしょう。かといって、NPOより価値が劣るかというと、そんなことはまったくないと思います。立派なミッション・ビジョンをかかげ、質の高いサービスを提供するNPOがあるのもいいですが、市民の自発性に基づく小さな活動が無数にあることの方が、市民参加やコミュニティのエンパワーメントという観点からはむしろ大事なのではないでしょうか。

 こうした地域活動団体にも、地域のリソースとしてもっと目を向けていく必要があると考えています。(布田)