先に紹介した『政策リサーチ入門―仮説検証による問題解決の技法』と並んでおすすめなのが、今回ご紹介する『地域の〈実践〉を変える社会福祉調査入門』です。書名に「地域の〈実践〉を変える」と入っているように、NPOなどの実務家が読むことを意識した内容で、説明も具体的な例が多く入っており理解しやすいです。
特徴的なのは、調査の価値と倫理について1章設けられ、しっかり説明されていることです。社会福祉の分野では高齢者や障がい者、生活困窮者など社会的に弱い立場に置かされた人を調査の対象とすることも多くなります。そのような場合は特に倫理的な配慮が必要なことも出てきます。そこをいい加減にすると、意図せず調査対象者に不利益をもたらしたり、人権やプライバシーの侵害をして、あとで大きな問題になる可能性もありますから、調査倫理は実はとても重要なことです。
もうひとつ特徴的なのは、調査事例の紹介にかなりの紙幅を使っていることです。本書全体では第1部が方法編、第2部が事例編となっていて、事例編では4つの事例が紹介されています。4つ目の事例は、コミュニティソーシャルワーカーを地域に配置する事業が予算削減により存続が危ぶまれた状況だったのを、調査により事業の意義が理解され、事業存続につながったというもので、なかなか読み応えもありました。
社会福祉調査となっていますが、福祉以外の分野でもとても参考になるはずです。現場の問題を調査によって変えていきたいという方におすすめです。(布田)