地星社のブログ

社会をよりよくする活動を行っている人や組織を支援する宮城の非営利組織、地星社のブログです。

市民が行う社会調査のために①—『新版 実践はじめての社会調査』

 以前も書いたように、世に出ている社会調査のテキストのほとんどは、大学の社会調査の授業で使われることを想定したものです。そのため、NPOのスタッフや公務員といった実務家が社会調査について学ぶにはやや実践的ではないということがあり、実務家向けの社会調査の本として『政策リサーチ入門―仮説検証による問題解決の技法』と『地域の〈実践〉を変える社会福祉調査入門』の2冊をご紹介しました。

 ただ、これらの本も、読者としては公務員や社会福祉機関のスタッフなどある程度専門性を持つ人が想定されており、「社会的課題に関心を持ち、自分たちで調査してみたいと思った普通の市民」にとってはややハードルが高いかもしれません。

 そこで、普通の市民向けに書かれた数少ない社会調査の本をご紹介します。1つは『新版 実践 はじめての社会調査』です。本書では、高校生の総合的な学習の時間や、大学生のレポート・論文作成、市民の自主的な調査活動などに役立つことが編集方針として掲げられ、調査の手法についてもポイントを絞った実践的な内容が紹介されています。編著者は、実際に高校の総合的な学習の時間で社会調査の授業を行っている教師や、市民による社会調査をサポートしている研究者らです。高校生や大学生、市民が実際に行った調査の例も多く挙げられているので、調査のイメージもつきやすいでしょう。

 本書で強調されているのは、高校生や大学生、市民が行う社会調査の意義についてです。社会調査を行うことによって、社会への市民参加を促進することの重要性が冒頭で述べられています。社会調査を専門家のものだけにせず、社会参加のツールとして活用していく上で、本書は役に立ちます。(布田)

 

実践はじめての社会調査―テーマ選びから報告まで

実践はじめての社会調査―テーマ選びから報告まで